欲しい ほしい ホシイ

クリエイティブディレクターの小霜和也(@kossii)さんの書いた本で、サブタイトルは「ヒトの本能から広告を読み解くと」です。

小霜さんがこの本を書こうと思ったきっかけは、いわゆる広告本(どうしたら売れるか)といった類の本を見ても、人の本能に訴えかける広告作りに焦点を当てた本がないことを知ったからだそうです。

本能に訴えるとはどういうことか。本の中で挙げられている例では「花」と「蛇」
があります。例えば、花の写真を見ると、穏やかな気持ちになるヒトが多いですが、蛇の写真をみると、嫌悪感を示すヒトが多い。これは何かというと、人が本能的に好きか嫌いかを判断していることを意味します。

この本の中では「認知」「記憶」「購買」「言葉」「マーケティング」「コミュニケーション」
をテーマに5つの章に分かれて書かれています。

自分が読んで気になったキーワードを挙げてみます。

「認知」:ビジュアルと言葉が同じ場所にあるときに、ヒトはそのビジュアルと言葉を関連付けて認知する。
「記憶」:ヒトの記憶はかなり曖昧で詳細までは覚えられない。記憶の定着は特徴を認識し、肥大化させることで行われる。
「購買」:購買欲は食欲と同じでヒトの本能の中のひとつ。感情が動いた後に理性が働く。
「言葉」:言葉は未来を定義する。
マーケティング」:ヒトの心は常に動き回っている。ターゲットに「あわせる」、「すりよわせる」だけのマーケティングからの思考だけでは企画は出来ない
「コミュニケーション」:コミュニケーションは遺伝子のように受け継がれていき、今も受け継がれているものについてはひとつの習慣となっている。(本文では文化遺伝子と定義づけている)

まとめると、作者の考える広告とは「製品に文化遺伝子をつけて、商品にする」ことです。
(例:「ウォークマン」に「外で音楽を聴く習慣」という文化遺伝子をつけて強力な商品にする)
また、強力な文化遺伝子の条件は「伝えやすく」「広がりやすく」「飽きられないもの」になります。

最近広告自体が効かなくなったという意見については、業界自体が頭がよすぎる傾向にあるからではないかと警鐘を鳴らしています。論理的で戦略的に考えてどうすればよい成果を上げられるかを考えることも大事だけれど、ヒトという本能を持った動物を対象にして広告を作っているのだから、その傾向も考えて進めていくことも必要ではないか、と。

本の中で特に印象に残っている部分を最後に紹介します。広告は無意識にヒトの心に作用させるもの。だから、ヒトの本質をねじまげるものになってはいけない。

本自体は平易な文章で書かれているので、読みやすいと思います。ですが、色々と心に留めておきたい部分がでてくるはずなので、定期的に読み返して意識の中に定着させていくといいと思います。

欲しい ほしい ホシイ── ヒトの本能から広告を読み解くと

欲しい ほしい ホシイ── ヒトの本能から広告を読み解くと