岸勇希×河尻亨一@art Chiyoda 1/2

コミュニケーションデザイナーの岸勇希(@yukixcom)さんと元広告批評編集長の河尻亨一(@kawajiring)さんのトークイベント(http://bit.ly/csLa3N)に参加してきました。

岸勇希さんの「コミュニケーションデザイン」という本はすでに読んでいて、岸さんが手がける仕掛けと仕組みのバリエーションにうならされていて、とても頭の切れる方なのだろうなと想像してイベントに参加してきました。

コミュニケーションをデザインするための本 (電通選書)

コミュニケーションをデザインするための本 (電通選書)


イベントの内容は大まかに分けると
A:審査員として参加されたカンヌ広告祭で感じた現在の広告の流れ、気になった作品の紹介。審査の裏話
B:岸さんの仕事の進め方

の2つでした。今回はAについて書きます。

Cyber部門で審査をして分かった3つの大きな流れ

・Real-realtime interactive(リアルタイムで進行(反映)していく広告)
○40年前に打ち上げた月面着陸をtwitterで再現する(記事:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0907/15/news045.html
Slapometer候補者にビンタというアクションで思いを伝える
○Last call 映画を見る前に携帯番号を登録。映画の中で反映される。どのように反映されるかはYoutubeを見てください。


AR・Webcamera(ARの応募が非常に多かった。ただARにしただけでは評価されない。ARだから出来ること)
handwrite(Pilot) 直筆の英語メールを送ることが出来る。
casting(Playboy)プレイボーイのモデルの候補者に応募してもらうために作られたサイト
Do you chat? 女性の暴力を見つけたら通報しようというキャンペーン

・Using Social Media(課題:Userからのメッセージをどのように返していくか)
○Best Buyのtwitterアカウント(@twelpforce)
このアカウントは電気量販店のBest buyが持っているアカウントだが、このアカウントに質問をすると、中の人(従業員)が答えてくれるというもの。
twelp=tweet+helpを意味する。中の人の豊富な知識をどうすればうまくいかせるかを考えたところ、このような仕組みになった。このアカウントのおかげでBest Buyはクレームを25%も減らしたという。
○Donatewords(岸さんオススメ) #donatewordsをつけてtweetすると、ガンで闘病中の人たちがいる病院のディスプレイにメッセージが流れる。つぶやきをただ流れていくものに終わらせるのではなく、誰かのエネルギーに変える。

○Replay(Gatorade)広告でなくFactをつくる。1映画化も検討されている。
○Andes teletransporter(Beer広告)Barで邪魔されずにビールを楽しむためにつくられた装置

○Pee in the shower(Brazilの節水キャンペーン)


Aのまとめ
・技術・トレンドの均質化(インタラクティブ手法については、昨年まではスウェーデン、日本、アメリカが突出していたが、iphone,twitter,facebookの出現により、全世界が均質化している。)
・コンテンツの成熟
・本質的課題解決への期待(社会的な評価:Replay)

裏話
・賞の選び方
この作品にはゴールドがふさわしいか? ゴールドにふさわしい作品と思った審査員が挙手をする。過半数の審査員が挙手をすれば、その作品がゴールドになる。過半数に満たない場合は、シルバーにふさわしいか、ブロンズにふさわしいか・・・といった流れで決める)

・審査員推薦作品の選出
選出作品(short list)を決めた後、どうしても自分の思い入れのある作品を審査員の前でプレゼンして、良いと判断されればshort listに入れることが出来る。ただし、審査員の国籍の作品は除く。

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PlayBoyのCastingという作品はある理由によってshort listに選出されませんでした。
これは、サイト上のインターフェース(カメラマンの動き)がWebを使っている人の気持ちを動かして、ネットリテラシーがない人でも安易に個人情報を提供する可能性もあることが明らかになったためです(未成年者も使用していた)。このサイトが評価されることで、世の中の広告に与える影響のことを議論した結果だということです。
人の気持ちを動かさなければ、物は動かないわけですが、今後は作り手側にも、どの程度まで無防備になってもらうかを想定して設計することも重要になってくるのだと感じました。